深センが日本でバズりはじめたのは2016年。
中国ビジネスに日本のスタートアップがこぞって興味を持ち始めた時期と被るため、深センがその一役を担ったと言っても過言でありません。
その後、「深セン視察ツアー」と深センのしの字もしらない方々が、興味本位で訪れ、深セン企業を訪問しましたが、ブームは2018年以降の中国投資ブームが下火になるとともに視察ブームも一旦おさまりつつあります。
深センがはなぜ「紅いシリコンバレー」なのか?
深センが紅いシリコンバレーと呼ばれる理由は2つあります。
1つ目は中国は共産党一党独裁の国家であり、国旗の色は共産党国家ならではの革命の色の赤であるため「紅い」と呼ばれています。
これについては特段説明の必要がないくらい明確です。
2つ目はハードウェアの大企業からスタートアップが集まっているからです。
「アメリカのシリコンバレーの1ヶ月が、深センの1週間である」と言われることもあり、その背景には華北強という電気街では部品の調達がしやすく、エンジニア、起業家、投資家も集まりやすい土地柄というのが関係しています。
ハードウェアの有名な深セン企業は、米中貿易戦争の餌食となったHuawei、ドローンシェア70%を誇るDJI、360度カメラのInsta360、充電器のAnker、京都の観光地にも導入中のEVのBYDなどが挙げられます。
深センの位置
深センと耳にするものの、実際中国の地図のどこにあるのか即答できる人はどのくらいいるのでしょうか?
多くの日本人は広東省に深センがあることすら知らない印象を受けましたが、「香港の隣」と伝えると、なんとなく位置関係がわかってくるようです。
香港の位置すらわからない場合はググってみると面白い発見があります。

赤いピンが立っているところが深センです。
関西国際空港からは4時間程度、羽田空港からは5時間程度で到着できます。
深センの人口
1975年には人口はわずか36,000人しかいない漁村でした。
今となっては全く想像ができません。
深センが改革開放で本格的に移住者が増えてきたのが1979年以降。
排行榜という中国のデータを保有するウェブサイトより深センの人口の変化をグラフ化してみました。

1975年時の人口がもはや見えないくらい少なく、1985年から1990年にかけては人口が37.97%増加し、2010年には1000万人を超える人口となりました。
2020年3月時点では12,528,300人とデータ上でていますが、現地の方からはカウントされていない深セン在住者を含めると2000万人以上いると言われています。
東京都の2018年の人口が1385万人であることを鑑みると首都ではない深センの規模は想像を超えます。
深センのGDP

深センのGDPは中国国内の中では、上海、北京に次いで3番目に高いです。
2019年のGDP(億元)のトップ5都市は下記の通りです。
上海市・・・38155.32(成長率6%)
北京市・・・35371.3(成長率6.1%)
深セン市・・26927.09(成長率6.7%)
重慶市・・・23605.77(成長率6.3%)
杭州市・・・15373.05(成長率6.8%)
参照元:https://new.qq.com/omn/20200123/20200123A0HBGG00.html
ちなみに、2019年の深圳の一人当たりGDPは21.55~21.85万元です。
韩国の一人当たりGDP21.96万元に追いつきそうな勢いです。
2018年には国際金融都市である香港のGDPを追い越しています。
参照元:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1653704655900678308&wfr=spider&for=pc
深センの主要産業
深センを支える産業はハイテク産業、金融業、物流業、そして文化産業の4大柱産業の他、不動産業、貿易業、旅行業及びアパレルおもちゃ産業があります。
2018年の第一、二、三産業までのGDP比率及び全体に占める割合は下記の通りです。
第一産業・・・22.09億元 0.1%
第二産業・・・9961.95億元 41.1%
第三産業・・・9961.95億元 58.8%
参照元:https://baike.baidu.com/item/%E6%B7%B1%E5%9C%B3/140588?fr=aladdin#6
深センの面積
深センの面積は1997平方kmです。
実は隣接している
東莞・・・2465平方km
広州・・・7434平方km
佛山・・・3848平方km
であるため、広東省の主要都市の中では比較的面積の小さい都市です。
小さいと言っても、地下鉄1号線を使って東から西に移動しても1時間以上かかります。
広東省以外の都市の面積を参考程度にご覧ください。
北京市・・・16810平方km
上海市・・・6340平方km
東京都・・・2194平方km
香港 ・・・1106平方km
深セン気候
亜熱帯型海洋性気候であり、短い冬はあるものの年中通して暖かく過ごしやすい気候です。
モンスーンの影響により、夏には南向きの風が広がり、モンスーンの低気圧、熱帯低気圧、高温と雨が続きます。他の季節には北東のモンスーンが優勢です。 最高温度は38.7℃(1997年7月10日)、最低気温は0.2°Cです(1957年2月11日)。
十分な降雨量があり、雨季は4月から9月、年間降水量は1933.3ミリメートルです。

深センの大学
深センには北京や上海と比べて飛び抜けて優秀な大学が揃っていないと言われていますが、実は優秀校の分校が深センにあるケースもあります。
2019年3月1日に深セン市教育局が公開した情報によると、深センには下記の大学があります。
深セン大学
南方科技大学
深セン技術大学
香港中文大学深セン校
深セン北理モスクワ大学
中山大学深セン校
ハルビン工業大学深セン校
深セン職業技術学院
深セン信息職業大学
清華大学国際研究生院
暨南大学深セン旅游学院
広東新安職業技術大学
深セン广播电视大学
参考元:http://edu.sz.bendibao.com/edu/2014429/613961.shtm
深センの歴史
「深センには歴史がない」とよく口にする方がいますが、全くそんな事はありません。新しい歴史が塗り替えて、過去の歴史が見えなくなったという解釈で良いでしょう。
まずは遠い遠い昔は、6700年前にこの地で人類の活動が始まりました。
その後…
1979年:宝安県から深セン市に名称変更
鄧小平により改革開放開始
1980年:第一経済特区認定。当時は人口3万人
1983年:深圳大学設立(ポニー・マーの出身校)
1987年:ファーウェイ設立
平安銀行設立
1988年:電気街オープン(秋葉原がモデル)
1989年:天安門事件
深セン証券取引所誕生
1991年:宝安国際空港営業開始
1995年:BYD設立
1998年:テンセント設立
2004年:地下鉄営業開始
2006年:DJI設立
2011年:Anker設立
2013年:一帯一路提唱
2015年:大衆創業民衆創意提唱
2019年:粤港澳大湾区发展规划纲要発表(グレートベイエリア構想)
深センの代表的な企業
深センを代表する企業をいくつかピックアップします。
①テンセント
Wechat、スマホゲーム、決済を抑えており、SNS、ゲーム、金融3つを抑えているグローバルカンパニーです。
創業当初はポケベルが今の携帯電話代わりに使用されていたので、ポケベルの開発やQQというチャットシステム、メーラーサービスを立ち上げていましたが、順風満帆というわけではなく、幾度となく資金難に追い込まれてた歴史があります。
今では、海外のゲームのライセンスを買収したり、OMOのスーパーに出資したりと多角的な事業に挑戦しています。
②ファーウェイ

スマホやPC、タブレットのイメージが強いかと思いますが、2020年から日本でも商業化される5Gの基地については世界トップクラスの技術を誇っています。米中貿易戦争の影響でGoogleを始めとしたシリコンバレーのサービスから縁を切られてしまいましたが、自社でOSを作り、中国の愛国心を逆に駆り立てるくらい応援されている企業です。北京大学や清華大学出身者が入社したい企業としてもトップクラスのレベルです。
③平安保険

アフターデジタルにも登場してくる深センを代表する保険会社です。
平安保険は独自でお医者さんと患者さんを繋げてチャットで簡単な問診をする平安好医生(グッド・ドクター)を無料で提供することで患者のデータを収集たり、病院の来訪履歴などのオフラインデータを収集したりしカスタマイズしたサービスを提供しています。
ナンバーワンでもありオンリーワンのサービスをOMOモデルを通じて完成しているビジョナリーな企業です。
④DJI

20年間ドローンは外観が変わっていないと言われていますが、その中でもDJIは世界シェア70%を誇るグローバルカンパニーです。
彼らの特筆すべき技術はスタビライザーであり、空撮をする時に少々の揺れが生じたとしても安定した撮影を行えます。
そのスタビライザーの技術を転用して、Osmoシリーズやジンバルを提供しています。単純な自撮り棒ではなく、確固たる技術が駆使されています。
⑤BYD

深センのEV社と言えばBYDが有名です。
実は深センのタクシーやバスはほぼ全てBYDが利用されており、排気ガスを排出しないのでクリーンな深センの青空はBYDが貢献していると言っても過言ではありません。
テスラやNioのように高級路線を狙っていないので、価格帯はミドル層狙い。
尚、現在は京都の観光地にBYDのバスが試験的に導入されています。